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「退職代行って、そもそも合法なの?」
2025年から2026年にかけて、大手退職代行サービスの運営会社に警察の捜査が入ったというニュースが流れました。それ以来、この不安を持つ人が増えています。使いたい気持ちはあるのに、「怪しい業界なのでは」「自分も何かに巻き込まれるのでは」と踏み出せない。
先に結論を書きます。退職代行というサービス自体は合法です。そして、摘発されたのは「退職代行をやったから」ではありません。やってはいけない領域に踏み込んだからです。
この線引きが分かれば、業者選びで失敗する確率は大きく下がります。順番に整理します。
退職代行の何が合法で、何が違法なのか
境界線は弁護士法72条にあります。この条文は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事務(交渉や法的手続き)を業として行うことを禁止しています。違反した場合の俗称が「非弁行為」です。
これを退職代行に当てはめると、こう分かれます。
合法なのは「伝えること」。「◯月◯日付で退職します」という本人の意思を、本人に代わって会社に伝える。これは使者としての伝達であって、法律事務ではありません。だから民間の株式会社が運営する退職代行でも、この範囲なら適法です。
違法になるのは「交渉すること」。有給休暇の消化、退職日の調整、未払い残業代の請求——会社と条件をすり合わせる行為は法律事務にあたります。これができるのは次の2者だけです。
- 弁護士: 法律事務の専門家として当然に可能
- 労働組合: 憲法28条で保障された団体交渉権に基づいて可能
つまり、民間業者が「会社と交渉します」と謳っていたら、その時点で違法(非弁行為)の疑いがあります。ここが最初のチェックポイントです。
2026年の摘発事例では、何が問題とされたのか
ニュースで不安になった人のために、報道された事実を時系列で整理します。
- 2025年10月、大手退職代行「モームリ」の運営会社が、弁護士法違反(非弁行為)の疑いで警視庁の家宅捜索を受けました
- 2026年2月、運営会社の代表らが逮捕され、その後起訴されました
- 報道によると、問題とされたのは利用者を提携弁護士に紹介し、その見返りに紹介料を受け取っていた疑いです。弁護士法は、報酬目的で法律事件を弁護士にあっせんすることも禁止しています
- 2026年4月、同サービスは経営体制を刷新して再開しています
- 2026年5月の初公判で、前社長らは起訴内容を認めたと報じられました
- 2026年6月、検察側は前社長に懲役2年、元執行役員に懲役1年6か月、運営会社に罰金200万円を求刑しました。同じ日、紹介を受けていた弁護士側にも有罪判決(懲役1年6か月・執行猶予3年、弁護士法人に罰金150万円)が言い渡されています
- 2026年8月28日、東京地裁は前社長に懲役2年・執行猶予3年、元執行役員だった妻に懲役1年6か月・執行猶予3年、運営会社に罰金200万円の有罪判決を言い渡しました
注目してほしいのは、有罪とされた行為の中身です。「退職の意思を伝える」という退職代行の本体業務ではなく、弁護士への紹介と紹介料のやり取りが問われました。つまりこの判決は「退職代行=違法」を意味しません。一方で、大手で実績があっても法に触れることがあるという事実は、業者選びの前提として知っておくべきです。
報道によると、判決で裁判長は、弁護士へのあっせんが約1年8か月で174人に上ったことを挙げ、「弁護士制度の公正・円滑な維持運営に影響を与えかねない大規模かつ職業的な犯行」と述べました。紹介の構造そのものが重く見られた、ということです。
なお、有罪判決を受けたのは前経営陣です。同サービスは2026年4月に経営体制を刷新したうえで営業を続けています。本記事では、報道された事実のみを記載しています。
利用者が罪に問われることはあるのか
心配な点だと思うので、はっきり書きます。違法な業者を使ってしまった場合でも、利用者側が罪に問われることは基本的にありません。罰則の対象は業者側です。
また、退職そのものが無効になることもありません。退職は本人の意思表示であり、伝達の経路に問題があったとしても、あなたが退職の意思を持っていた事実は変わらないからです。
ただし、実害はあり得ます。交渉が必要な場面で業者が対応できず、退職手続きが宙に浮くケースです。たとえば会社側が「有給は認めない」「退職日はずらせ」と条件を出してきたとき、民間業者は法律上そこで止まるしかありません。粘って交渉すれば、それこそ非弁行為です。
だから業者選びは「捕まるかどうか」ではなく、「自分のケースで必要なことを、合法にやりきれる運営元かどうか」で考えるのが正解です。
安全な業者を見分ける5つのチェックポイント
申し込み前に、公式サイトでこの5点を確認してください。
1. 運営元の種類が明記されているか。株式会社(民間)・労働組合・弁護士(法律事務所)のどれかが、社名や組合名まで具体的に書かれているか。運営元がぼかされているサイトは候補から外します。
2. 自分に「交渉」が必要かどうかで運営元を選んでいるか。円満な職場で、意思を伝えれば済みそうなら民間でも足ります。有給消化・退職日調整・引き止めが強い職場なら労働組合運営、未払い賃金の請求やトラブルの気配があるなら弁護士運営。この対応関係が基本です。
3. 民間業者なのに「交渉できます」と書いていないか。前述のとおり、これは非弁行為のサインです。「会社への連絡(伝達)を行います」と書いてある業者は、むしろ線引きを理解している証拠です。
4. 弁護士や他士業への「紹介」を売りにしていないか。2026年8月の判決で有罪とされたのが、まさにこの構造です。紹介した側だけでなく、紹介を受けた弁護士側も有罪になっています。「困ったら提携弁護士におつなぎします」型のサービスは、あっせんの疑いに近づきます。弁護士対応が必要なら、最初から法律事務所が運営する退職代行に直接依頼するほうが安全です。
5. 料金が相場から大きく外れていないか。相場は民間・労働組合運営で2〜3万円台、弁護士運営で5万円台からです。極端に安い業者は、運営実態や対応品質を疑ってかかったほうがいい水準です。
まとめ: サービスは合法。選ぶ基準は「交渉の要否」
- 退職代行自体は合法。違法になるのは弁護士・労組以外が「交渉」をしたとき(弁護士法72条)
- 2026年8月に有罪判決が出た事件は、弁護士への紹介料が問われたもので「退職代行=違法」ではない
- 違法業者を使っても利用者が罪に問われることは基本的にないが、交渉が止まる実害はある
- 民間=伝達のみ / 労働組合=交渉可 / 弁護士=交渉+法的請求まで。自分の職場の状況で選ぶ
では、交渉が必要な場合に労働組合と弁護士のどちらを選べばいいのか。できることの範囲と費用の違いは退職代行は労働組合と弁護士どっち?で比較しています。
なお、「使ったことが周りに知られないか」という不安については別の記事にまとめています。転職先への影響は退職代行は転職先にバレる?前職調査の実態を、実家暮らしの人は退職代行は親にバレる?塞ぐべき5つの連絡経路を読んでみてください。

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