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「後任が決まるまで、もう少し待ってほしい」
そう言われて、2か月が過ぎた。求人が出ている様子もない。次に聞いたときも、たぶん同じことを言われる——。
退職を伝えたのに退職日が決まらない状態は、伝える前よりしんどいものです。辞めると決めた自分と、まだ辞められない現実が、毎日ぶつかり続けるからです。
先に結論を言います。後任を用意するのは会社の仕事で、あなたの義務ではありません。そしてあなたが果たすべき引き継ぎは、後任がいなくても完了できます。
この記事では、「待ってほしい」の見分け方と、引き継ぎ書だけを残して辞める手順を整理します。
後任を用意するのは、あなたの仕事ではない
まず、線を引きます。
採用も人員配置も、会社の経営判断です。後任が決まっていないことを理由に退職を止める法的な根拠はありません。期間の定めのない雇用契約なら、民法627条により、申し入れから2週間で退職は成立します。
一方で、引き継ぎについては話が別です。ここを混同すると、どちらも投げ出したくなります。
引き継ぎに明確な法律の条文があるわけではありませんが、就業規則に定めがある会社は多く、信義則上も求められると考えられています。何も残さずに去って会社に実害が出た場合、例外的にトラブルになる余地はあります。
つまり、やるべきなのは「後任を見つけること」ではなく「引き継げる状態を残すこと」です。この2つは全く違います。そして後者は、後任がいなくても今日から作れます。
「待ってほしい」の3パターンを見分ける
同じ「待ってほしい」でも、中身は3つに分かれます。見分ける方法は1つだけです。
「いつまでですか?」と聞いて、日付が返ってくるかどうか。
① 本当に困っている
「11月の異動まで」「来月の面接で決める」など、具体的な日付や予定が返ってきます。この場合は、譲れる範囲で調整する価値があります。ただし、あなたの退職日を先に決めたうえで調整してください。
② 引き止めの口実
日付が返ってきません。「そう言われても…」「もう少し」と曖昧なまま話が終わります。後任の話は、辞めさせないための材料として使われています。
③ 先送りの手口
一度は日付が出るのに、その日が近づくとまた延びる。これが2回続いたら、③と判断していいです。待っても終わりません。
②と③に共通するのは、期限がないことです。期限のない約束は、約束ではありません。
「人手不足なんだから」「無責任だ」という言い方をされている場合は人手不足で辞めるのは無責任?を、引き止めの断り方そのものは退職の引き止めの断り方にまとめています。
引き継ぎ書は、後任がいなくても作れる
ここが本題です。引き継ぎ書は「誰か」に宛てて書く必要がありません。後で読む人が読めればいいので、宛先は空欄で構いません。
入れるのは、次の5つです。
- 担当業務の一覧と、それぞれの手順
「毎週月曜に◯◯を集計してAさんに送る」レベルまで具体的に。頭の中にある暗黙のルールほど、書く価値があります。 - 進行中の案件と、次の期限
どこまで進んでいて、次に何が起きるか。止まると困る順に並べます。 - 連絡先の一覧
取引先の担当者、社内の関係部署。「この件はこの人に聞けば分かる」が書いてあるだけで、後任は動けます。 - システムやファイルの場所
どのフォルダに何があるか。パスワードそのものは書かず、「情報システム部で再発行」など取得方法を書きます。書面にパスワードを残すのは避けてください。 - よくあるトラブルと、そのときの対処
これが一番喜ばれます。マニュアルには載らない実務そのものだからです。
分量は多くなくて構いません。A4で2〜3枚、箇条書きで十分です。完璧なものより、今週中に渡せるものを作ってください。
渡し方で、あとの揉め事が決まる
作った引き継ぎ書は、メールで送ります。手渡しやプリントだけで済ませないでください。
理由は単純で、記録が残るからです。「引き継ぎをしないまま辞めた」と後から言われる余地をなくします。件名と本文はこの程度で十分です。
件名: 引き継ぎ資料の送付(◯◯部 ◯◯)
本文: ◯月◯日付で退職いたします。担当業務の引き継ぎ資料を添付します。不明点があればご連絡ください。
ポイントは、退職日と引き継ぎ資料を1通にまとめることです。「引き継ぎは済ませた」「退職日はこの日」の2つが、同じ日付の記録として残ります。
この1通を送った時点で、「後任が決まるまで待って」の根拠はほぼ消えます。引き継ぐ相手がいなくても、引き継げる状態は用意されているからです。
それでも退職日が決まらないなら
引き継ぎ書を渡しても話が進まない。退職届を受け取ってもらえない。そこまで来たら、相手を上司から会社そのものに切り替えます。
退職届を内容証明郵便で会社宛に送れば、いつ・何を申し入れたかが公的に記録され、そこから2週間で退職は成立します。上司が受け取るかどうかは関係ありません。
威圧的な引き止めが続いている場合は、どこからが問題になるかをしつこい引き止めは違法?にまとめています。
自分で送るところまで気力が持たない場合は、退職代行という選択肢もあります。ただし注意点が1つあります。退職日や有給の「交渉」ができるのは、労働組合か弁護士が運営するサービスだけです。民間業者は伝えることしかできず、交渉すると違法になります。退職日でもめている状況では、この違いがそのまま結果に出ます。選び方は退職代行おすすめ|失敗しない選び方は「運営元」で決まるにまとめました。
まとめ
- 後任を用意するのは会社の経営判断。あなたの義務ではない
- あなたの義務は「引き継げる状態を残すこと」。後任がいなくても完了できる
- 「待ってほしい」は日付が返ってくるかで見分ける。期限のない約束は約束ではない
- 引き継ぎ書はA4で2〜3枚、退職日と一緒にメールで送る
- それでも進まないなら、内容証明で会社に直接申し入れる
後任がいないのは、あなたが辞めるからではありません。あなたが辞める前から、すでにいなかったのです。

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